不便益のススメ(川上浩司・岩波ジュニア新書)
日常生活が便利すぎると、新しい出会いや発見もなくなる」という不便益について考えさせられる一冊です。
図書館で面白そうな本を見掛けたので借りて読んでみました。
不便益とは「不便ゆえに益がある」状態とお考えください。
たとえば、
- 真っ平らではなくでこぼこがあちこちにある園庭
- 段差などが適度にあるバリアアリー(バリアフリーではなくて)の家
- 右折しかしてはいけない京都観光ツアー
- ゴミを見付けて教えてくれるだけのロボット
などは、わざわざ不便になるように設計してあります。
園庭は真っ平らな方がメンテナンスは楽ですし、園児が転んだりしにくいです。
段差なしの方が老人が転びにくいですし、掃除もしやすいです。
左折もできた方が観光はしやすいに決まっています。
ルンバみたいに見付けたゴミを吸い込んでくれる方が掃除の手間が省けます。
でも、そうしないのは不便さにメリットがあるからです。
でこぼこがある園庭の方が、子供は楽しく走り回って体力や運動能力がアップします。
同じくバリアアリーの家では、老人の身体機能が落ちにくくなります。
右折しかできないと、無駄な回り道をするので思わぬものを見付けられます。
けなげなロボットの代わりにゴミを拾ってやりたくなります。
日常生活が便利になりすぎると、意外性もなく新しい出会いや発見もなくなります。
その極端な例として何度も挙げられるのが「どこでもドア」です。
どこでもドアでは「途中の移動」が一切ありませんので、電車やバスで見られる車窓の風景もありません。
歩いている最中の自然も目に付くことはありません。
すべてのことで不便益を押し付けられてはたまりませんが、ところどころに不便益があると面白そうです。
とりあえず、当会ホームページもお問い合わせフォームをもっと不便に(やめなさい)。