「返報性の原理」を活用して良い時と悪い時
商売で「返報性の原理」を使うのは正解か、先生からの意見や実務面での問題を考えた議論があります。
前回、前々回と「返報性の原理」について書きました。
・「返報性の原理」の限界と有効範囲は?
・「返報性の原理」について先生方のご意見と私の意見
前回のメールの最後にこう書きました。
商売でお客様相手に「返報性の原理」を利用することは常に正解なんでしょうか?
これについても、茨城県の行政書士・O先生からご意見をお寄せいただきました。
商売の営業に返報性の原理を使い「お返しをしなきゃまずい」と思わせること悪いことではないと思いますが,脅迫まがいの思わせ方はいけないと思います。
最終的に商品を買ってくれるかどうかを判断するのはお客様なので、度を過ぎなければ返報性の原理を商売に用いることは悪いとは思いません。そうでなければ,営業すること自体ができなくなってしまいます。
「返報性の原理」をえげつなく使うというのは、やくざ屋さんなどがやってそうですね。
あるいはかつての豊田商事なんかもそうです。
一人暮らしで寂しくしているお年寄りに親切にして、大金を騙し取っていった例が山ほどありましたから。
そして倫理面での問題とは別に、実務面での問題というのもあります。要するに「そこで使ったらまずいだろ」という場面があるという話です。
たいていの人は感覚的に「返報性の原理」を理解しています。つまり、恩を受けたら、例えその恩が望んだものであろうとなかろうと、返さないといけない気分になる事を知っています。
ということは、恩を受けそうな場所や相手からは、恩を受けないうちに逃げ出してしまいます。
特に「恩の着せ合い」が日常茶飯事な田舎から人間関係が希薄な都会に逃げてきた人にとっては、「望んでもいない恩を着せられる」など最も忌み嫌うべき代物です。
ですから、見込み客のリストを数多く集めたり、より多くの人にサンプルを試してもらったりするには、逆に
「返報性の原理を働かせない」
「気軽に受け取ってもらえる」
工夫が必要になります。
「返報性の原理」を使って(使わなくてもいいですが)商品やサービスを購入してもらうのはその後の段階です。
大人数を相手にする時には、返報性の原理が働いてくれる事は期待できませんし、すべきでもないという事です。