「ギークって何?」な方向け【小飼弾のアルファギークに逢ってきた】
小飼弾のアルファギークに逢ってきた(小飼弾/技術評論社)は、世界を変える志を持つ人々のエピソードや考え方を紹介しています。ビジネスや技術に興味がある人におすすめです。
小飼弾のアルファギークに逢ってきた(小飼弾/技術評論社)
◆アルファギークとは?
「世界はこうなる」と予測するよりも「世界をこうする」人々のこと。何しろ『未来を予測する最善の方法は、こうなってほしいという未来を自分で作ってしまう事』ですから。
プログラム言語やソフト・サービスの開発について解説するのは、この本や他の人に任せるとして、ほかの業界やほかの場面でも役に立ちそうな話をいくつかピックアップしてみます。
まずは17ページ。ダンコーガイ氏の「大きな会社を作って大勢の人を雇用した方が、多くの人を幸せにできるのではないか?(要約)」という問いに対してのDavid H. Hansson氏の答え。
「たとえば300人いたとしたら、我々でそれを抱えるのではなく、30個くらい会社を作ってそれぞれが活動すればいいんじゃないかな。そしてそういうやり方がうまくいくことを世に問う方が、世の中のためになるのではないかと思う」
※その考えや手順をまとめたGetting Real日本語版がこちらで読めます。
35ページ。
ダンコーガイ氏「世界征服を楽しめる人と征服したあとの世界を統べる人って、タイプが違うじゃないですか。」
伊藤直也氏「世界中の人から(自分が作ったサービスを)使われるのが目的なのか、使われたあとに起こった世界で何が起こるのかを見たいっていうことが目的なのかという違いだと思います。」
世の社長さんでも「ゼロからビジネスを立ち上げて形にするまでが好き」という起業家と、「形になっているビジネスを保守・管理するのが好き」という実業家の2種類に大きく分けられそうです。そして私は「完成したプラモデル」に興味はありません。
次、44ページ。
Larry Wall氏が、3000万円(たぶん)を棒に振ってまでPerl6の開発に没頭したという話の後に、
ダンコーガイ氏「3000万棒に振るとは太っ腹ですね」
Larry Wall氏「《(私は)金持ちです。》どれだけ持っているかではなく、どれだけ与えることができるかというのが金持ちの定義なら」
かっこ良すぎます。確かに、Perlで書かれたプログラムのお世話になったことがない人はネット上にはいないでしょうから、この定義ならLarry Wall氏は世界有数の金持ちです。
でも、このかっこ良すぎる対談の締めは、
Larry Wall氏「プロトカルチャ~」
ダンコーガイ氏「ヤックデカルチャ~」
…ボドルザーにラプラミズかよ。映画版マクロスならリアルタイムで映画館に見に行ったよ。
114ページ。
ダンコーガイ氏「そこまで色々コンピューター言語を研究してきんだったら『俺言語』を作るつもりはなかったんですか?」
Dave Thomas氏「(中略)コンピューター言語を考え出すというのは、まったく独特の才能で、それは私の才能ではありませんでした(That was not my talent.)」
これまたかっちょいい! ただし、自分のメインの才能に絶大な自信を持っている人が、それとは別の分野や対象に関して「オレにはそんな才能ないよ」と言うからカッコイイんです。
何にもしないうちから「オレ才能ないし」といっても単なる負け犬、「来年から本気出す」とずっと言ってる輩と変わりません。
191ページ。
ダンコーガイ氏「(中略)人によってどこまで共有を許すかっていうのは違うんですよね。実際に夫婦喧嘩をしてみないと、どこは折れて、どこを押すかっていうのはわからないじゃないですか」
近藤淳也氏「そういうのをやらずに最初から諦めていたら、どんどん離れていく一方ですもんね」
ダンコーガイ氏「だからやっぱり、夫婦を長持ちさせる秘訣っていうのはちゃんと喧嘩するべきところは喧嘩するっていうことですよね」
ご説ごもっともでございます。昔のマンガでも、最初は仲が悪くて大喧嘩をしても、かえって深い付き合いになるみたいなのが良くありました。自分をぶつけ合うことでお互いを理解し合うというのは、深く長く付き合うには必要なんでしょう。
私も妻と夫婦喧嘩をした挙句に、何度正座をして説教を聴く羽目になったことやら。おかげで(かどうかは知らんけど)結婚5年目ですがまだ新婚ほやほやです。
215ページ。
ダンコーガイ氏「この本にあってみんな知ってるのかなってググっても、出てこねえじゃんっていうようなことっていくらでもあります。だから、そういうところでは、『オヤジ』は強いです」
物心ついた頃にはネットが身近にある世代は、「検索しても出てこないということは、そんなものは存在しない」と信じている節があります。(マジでこんな感じ)
でも、言語化できない情報や知識なんてウジャウジャありますし、油断しているとちょっと昔の事だってうやむやになっちゃうんですから。ぜひともオヤジ世代には色んな事を次の世代に伝えていただきたいものです。私も息子にはできるだけ色んな事を伝えて行くつもりです。
218ページ。
ダンコーガイ氏「要するにどういう技術が向上すると自分は不要になるのか。もしそれが見付かったら、自分が作っちまおうよ。自分で作って最高値で売って、次に行けと」
どんな業界・会社でも「同業他社にこれをやられたら洒落にならん」というような事はあるはずです。一つも思い付かないとしたら、それは知的怠慢です。非常にまずいです。
でも、自社がそれをされて洒落にならないほど嫌な事なら、たぶん同業他社だってメチャクチャ嫌なはずです。そして、そんな事はいつか誰かがきっとします。
なら「やられる前にやれ」ということです。